熊の胆(くまのい)

熊の胆(くまのい)
ただいま、井原忠政さんの「三河雑兵心得」読破中。

カメロクにも含まれている"熊胆"が出てきました。

本文にもあるように、腹痛にはよく効きます。

酷暑で冷たいものを食べ過ぎて
お腹を壊したときには六神丸、よく効きます。

本文より(ちょっと長いです)

「止まれ」
 平八郎が左手を上げて行列を止めた。
 道端で武士が馬を下り、蹲っている。腹の辺りを押さえ、苦しそう
だ。浜名城代の本多百助ではないか。
「如何された?」
 平八郎が訊いた。
「うん、持病が出よりました。差し込みが酷うてな」
(差し込みか……)
 茂兵衛は、高根城番時代の四年間、案内役の猟師の鹿丸と親しく付き合った。
以来、彼から強く薦められた熊胆を、常に携行するようにしている。熊の胆嚢を
干して作る生薬――所謂「熊の胆」だ。飲めば万病に効くが、最も卓効を示すの
は、腹痛なのである。
「とても苦うございますが、試してみますか?」
 そう勧めると、
「熊の胆でも、狐の金玉でも飲む。こう痛くては、いざというとき殿のお役に立
てん」
 発想が三河者である。茂兵衛には今一つ理解し辛い。
 通常、熊胆は水に溶かして飲むのだが、緊急時でもあり、米粒大をそのまま竹筒の水と共に服用させた。よほど苦かったのだろう。百助の肥えた頬が苦痛に歪んだ。
「如何ですか?」
「や、なにせ古くからの持病でござれば、なかなか……」
と、相変わらず腹を押さえていたのだが――やがて、ゆっくりと顔を上げた。
「面妖な……すっと痛みが消えたわ」
茂兵衛に驚きはなかった。熊胆、効くときは本当に効くのだ。
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